溝口敦「直ちに原発を止めない脱原発公約の無責任」

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2012年12月15日 12:16

安田氏からいただいた3本目のコラムです。

溝口敦(ノンフィクション作家・フリージャーナリスト)「直ちに原発を止めない
脱原発公約の無責任」

(<溝口敦の斬り込み時評>第107回、『日刊ゲンダイ』2012年12月4日):

各党の原発政策を見ると「責任」という言葉が目につく。しかし同じ「責任」という
言葉を使っていても、意味するところはバラバラである。

民主党・野田首相「だらだらと10年間立ち止まって考えるのも、すぐにゼロというの
も無責任だ」

自民党・安倍総裁「安全神話に寄りかかってきたと反省する。私たちに責任がある。
軽々に稼働をゼロにするとは言わない。それが責任ある政党だ」

未来の党政策要綱「安全や雇用・経済対策など『原発稼働ゼロ』で直面する課題に責
任ある対応をし、全ての原発が確実に廃炉となる『卒原発』へ」

共産党・志位委員長「政府が行ったパブリックコメントでは8割が『即時原発ゼ
ロ』、ただちに『原発ゼロ』の日本を実現することが政治の責任だ」

今、東日本大震災級の地震が再来すれば、たぶん日本国は経済的に疲れ切って地上か
ら消滅する。稼働している大飯原発が関西と北陸を放射性物質で汚し、関西経済圏は
壊滅、関東経済圏だけの片側のエンジンで日本は墜落する。

有史以来、日本列島は大地震、大津波に揺れ続けたはずだが、一度として滅びること
はなかった。しかし今、原発があるがため、被害は回復不能になった。汚染地は長期
間、無住の地として放棄される。

地震は予知できない。来ないと思っていたのに来たのが東北地方太平洋沖地震だっ
た。原発の安全性神話は「根拠なき願望」に過ぎないと分かった。去年来たから当分
の間来ないと考えることに科学的根拠はない。国民は二度と「根拠なき願望」に頼っ
て日本消滅に出くわすわけにいかない。

とすれば、原発に対する国民への「責任」とは即時ゼロしかない。2030年代にゼロと
か、22年までに全廃とか、3年以内に結論とかは、そのときまで大地震は来ないとい
う「根拠なき願望」に立った無責任な政策である。

まして維新の会の公約骨子「既設の原子炉による原子力を30年代までにフェードアウ
トする」は、原発廃棄の意志すら感じ取れない無責任の論だろう。同会は今になって
原発政策で右往左往しているが、それこそ福島原発の大災厄を他人事と見て、何も学
ばなかったことを語っている。

日本は広島、長崎、福島と3度大量被曝した世界唯一の国である。4度目の被曝に出合
うなら、世界は「バカは死ななきゃ治らない」と笑おう。

現在、日本で稼働している原発は大飯原発の3号炉、4号炉の2基だけ。2炉をストップ
するなど簡単だし、それに代わる経費など日本消滅に比べればベラ安といえる。

(以上)

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