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2009年03月15日

経済小説家による小泉・竹中路線の愛国者的批判 半澤健市

経済小説家による小泉・竹中路線の愛国者的批判

リベラル21に半澤氏の興味深い書評がありましたので、転載します。
書評 高杉良著『市場原理主義が世界を滅ぼす!』(徳間文庫)
半澤健市 (元金融機関勤務)

《『金融腐蝕列島』の感動》
 40年の金融マン生活を終えた私が、高杉良(1939年~)の『金融腐蝕列島』を読んだのは10年ほど前である。そのときの昂揚した気持を私は忘れない。
大手都銀上層部の権力闘争、貸付債権回収を巡る暴力団や総会屋とのウラ取引、MOF(大蔵省)担当者の得意と屈辱、迷走経営を糾弾するミドルの決起。これらを描ききった長編企業小説であった。類型的で通俗的だといえばいえる。しかし、この作家のもつ構想力と圧倒的なリアリズムに私は圧倒された。高杉は取材に1年をかけ、銀行上層部から末端の行員、大蔵省の要路など100人以上に話を聞いたという。「〈ドキッとするほどリアルであり過ぎる〉と多くの銀行関係者が証言したのを聞いて、私は苦労のし甲斐があったと思った」と自ら書いている。続編もあるが、この第一作は、70本の経済小説を書いてきた著者の一つの到達点だと思う。
『市場原理主義が世界を滅ぼす!』は、その作家が書いた小泉・竹中路線批判の書である。07年に光文社より発行された『亡国から再生へ』に加筆修正し徳間書店で文庫にしたものである。

《小泉・竹中路線の「売国性」》
 小泉は経済を知らず具体的な政策形成は竹中に丸投げした。その竹中が「感度が鈍く、米国金融モデルを信用し続けていた人物」であることが著者によって次々に例示される。一、二を紹介しよう。
一つは郵政民営化批判である。
08年4月にBS朝日の対談番組「竹中平蔵・上田晋也のニッポンの作り方」で竹中はお笑いタレント上田を相手に経済不況に関して次のような提言をした。
▼わたしは実は、日本の方を心配しています。サブプライムの影響そのものは大きくないが、円高を通して輸出産業が影響を受ける。一方で改革が進まず内需が弱い。日本をよくすることは、サブプライムと別に考えていく必要があります。そこで今回もニッポンの作り方として、『民営化された日本郵政はアメリカに出資せよ』と是非申し上げたい。(略)アメリカに対しても貢献できるし、同時に日本郵政から見ても、アメリカの金融機関に出資することで、いろいろなノウハウを蓄積し、新たなビジネスへの基礎もできる。

これを聞いた高杉の頭には二つの解釈が浮かんだ。一つは実体経済を理解できない無能な経済学者竹中であり、二つは米国の走狗である竹中である。高杉は以前に小泉・竹中ラインを「売国奴」と呼んだことがある。二人は、日本経済をどん底まで叩き落として、米国のハゲタカファンドにあらゆる国富を安値で買い叩かせる。郵政民営化も郵便貯金を米国に差し出すということだ。こう考えたからである。
その高杉が、竹中がここまでストレートに言うのを聞いて「さすがに気は確かかといいたくなる」と書いている。そして「仮に竹中の発言通り、(08年)4月の時点で郵便貯金を米国金融機関へ出資していたら国民の貴重な財産が泡と消え、日本郵政は倒産の危機に瀕していた」と述べている。

《竹中「構造改革の失敗」》
 二つは、金融庁の裁量行政による失敗である。
具体例として、UFJホールディングス(旧三和銀行グループ)の三菱東京フィナンシャル・グループとの不必要だった合併のことを述べている。05年9月期中間決算で大手都銀6グループの最終利益は合計1.73兆円と、前年同期の21倍という大幅増益となった。うち三菱東京UFJは7118億円でダントツの利益を計上している。メディアは「三菱東京UFJ」がトヨタを抜いた」と書いた。それに関して高杉は次のようにいう。
▼UFJはつい1年前には経営不振で救済合併として三菱東京と統合された銀行である。
そんな傷んでいたはずの銀行が、それからわずか1年で最大の利益をあげられた理由が「景気回復による改善」であるはずがない。UFJが最大利益をあげられた理由は、不良債権処理に対して積んでいた引当金が不要になり引き戻されたからである。つまり、UFJは竹中路線による金融政策によって、積まなくてもいい引当金を積み過ぎていたのだ。よってこの事実が物語るのは、竹中金融担当大臣の明らかな金融行政の失敗である。

それを書かずにトヨタを抜いたなどと書くメディアは愚かだというのである。
竹中はなにかというと構造改革の成功例として不良債権処理を挙げるが実態は決してフアインプレーではなかったのである。私自身もUFJグループの一員だったから、合併後の社内カルチュアの変化を仄聞するが、銀行という疑似インテリ集団の再編悲劇が予想通り起こったらしい。

《大手メディアへの厳しい批判》
 高杉は返す刀で、大本営発表を繰り返すだけで、報道すべきことをサボった大手メディアを批判する。たとえば、アメリカが毎年日本に突き付けている『年次改革要望書』は、90年代始めから公開されているのにそれを黙殺した。竹中はそんなものは知らないとシラを切った。その間に要望書にある通りの政策がこの国で次々と実行されたのである。少数の慧眼な識者、たとえば森田実、吉川元忠、関岡英之、本山美彦、原田武夫、小林興起らはそれを夙に指摘していた。だがその声は無視されたのである。報道されるようになったのは極く最近である。大手メディアは産業界、官僚、御用学者、広告会社とともに、新自由主義・市場原理主義のイデオロギーを人々に注入し続けてきたというのである。高杉は特に日経、朝日に強い批判を浴びせている。

結局のところ、『市場原理主義が世界を滅ぼす!』で高杉がいくらか挑発的かつ感情的に訴えていることは次のことである。すなわち、米国の対日経済戦略は「日本の金融資産を米国経済の為に使う」のが目的だったこと。すなわち、新自由主義はそのイデオロギーであること。すなわち、日本人はほぼ洗脳されたこと。すなわち、その下手人は小泉・竹中であること。これである。
本書において高杉は熱烈なナショナリストとなっている。ならばその愛国的心情と愛国的分析をわれわれはどう評価すべきであろうか。

《長い戦後における両国経済の消長》
 戦後60年の日米関係を両国経済力の消長から見ると次のようになるだろう。
前半の30年は米国がカネを出して日本を復興させた。その日本が造る商品を米国が買った。日本は貧しい経済大国になった。米国が借金国となり日本が債権国になったのが80年代である。戦後後半の30年は、米国が日本に米国商品を買えと迫った。しかし買うものはなかった。
金融市場はそれでも開放があったほうである。テレビでは疾病、入院保険、葬儀費用のCMが花盛りである。米国保険業による参入は成功した。破綻した世界最大の米国保険会社AIGの生保子会社は日本市場で利益の大半を出していたのである。昔の日本人には、ニコニコしながら人の不幸で商売する習慣はなかったと思う。そこで日本商品の売上代金がすべて米国へ還流するシステムを米国は創ったのである。ニッポンの貯蓄がアメリカの消費を支える構造である。その最終段階を仕上げたのが小泉・竹中チームであった。それを踏まえた高杉による日米関係の「愛国的分析」は、御用エコノミストにはない的確な分析だといってよいであろう。

しかし「08年恐慌」は、米国に都合の良いシステムを消滅させる条件を形成しつつある。小泉・竹中路線の支持基盤は崩壊に向かっている。「かんぽの宿」売却を巡る日本郵政―その背後にオリックス―対鳩山邦夫の対決、定額給付金を巡る麻生対小泉の対立は、そういう日米関係崩壊の戯画的な表現かもしれない。
そこまでは分かるのだが、この国の経済再建の青写真は五里霧中のなかにある。市場原理主義批判において鋭い高杉良も、前途を明快に指し示しているわけではない。
本書は他に、城山三郎を師とする高杉の経済小説論、作者が好意をもった財界人論、メディア相手の訴訟問題、田原総一朗・ホリエモン批判などの興味ある記事を載せる。
本書は「愛国者vs売国奴」の対決を面白く読ませる一冊である。

高杉良著『市場原理主義が世界を滅ぼす!―〈日本人〉再生への提言』、徳間文庫、徳間書店、09年2月刊、590円+税

以上リベラル21よりの転載。


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Posted by take at 00:09│Comments(2)読書
この記事へのコメント
外国のハゲタカやくざの手先になって日本国民の財産を食いまくったあげくに、国権の最高機関である日本の国会の要請を拒否して逃亡した竹中は最悪の売国奴だ。竹中自身はやくざの家来になって国会議員にならせてもらったのに、こんどは国会を足蹴にしてたんまりもらった裏金とともに海外へ逃亡するとは卑劣すぎる凶悪犯だ。こんなやくざの手先をかくまっている郵政暴力団を倒して、売国奴竹中を退治しましょう。
Posted by 日本国民を食い殺している売国奴竹中らを退治しましょう。 at 2009年03月29日 05:54
コメントをありがとうございます。いろいろな意見があると思いますが、私個人(メディアの仕事をする人間として)の意見としては「郵政民営化」の議論を展開せず、小泉政権を批判する評論家等を排除することに手を貸したメディアの罪はかなり大きいです。
Posted by taketake at 2009年03月29日 23:38
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