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2011年11月04日

「私のTPP反対論」 半澤健市


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オバマの輸出策に危うい日本の主権

 

半澤健市 (元金融機関勤務)

 

 TPPの本質は「貿易問題」であると同時に「新自由主義」の問題である。
サブプライム融資という毒入り饅頭で米国金融資本主義は破綻した。「リーマンショック」である。以後、世界は第二の「大恐慌」に向かって着実に歩を進めている。私はそう考えている。しかしウォール街は金融資本主義の失敗とは考えていない。ウォール街の支配から自由でない米オバマ大統領も同じである。

《ウォール街は反攻に乗り出す》
 オバマは2010年の一般教書演説で輸出振興によって雇用増大と米国経済の復活を目指すと強調した。輸出を5年で倍増するという。オバマは一面で米国経済の失敗を認めている。貯蓄せずにカードと不動産バブルで消費を拡大し赤字は外国からの借金で埋める。これが息子ブッシュまでのアメリカ経済であった。国際収支の赤字は米国債の格付けを低下させる。経済成長は、消費、投資、輸出、借金に依存している。米国経済に残された回復策は、消費抑制、緊縮財政と輸出の振興しかない。しかし輸出する商品はあるのか。軍事産業に発した航空・宇宙産業やハイテク技術を除けば勿論その質量は軽視できぬが、「モノ作り」をやめて「金融工学」、「会計技術」、「コンサルタント技術」、「訴訟技術」、「マクドナルド」、「スターバックス」という「サービス産業」に特化したのがアメリカ経済の実体である。

《サービス産業を丸ごと輸出する》
 私は「サービス産業」は簡単には輸出できないと思っていた。しかしマックやスタバはシステムごと海外へ持ち出した。食文化のカベは存外に薄かった。「飲茶」(やむちゃ)しか食べないと言っていた中国人もマックとケンタッキーを受け入れている。フランス人だってコカコーラを一杯も飲まぬわけではないだろう。
オバマ政権の狙いは「サービス産業」自体をそっくり輸出することである。「サービス」は外食産業だけではない。現に日本の「サービス市場」は外資に浸食されている。たとえばガンと葬式のための笑顔に満ちた保険CMを見よ。彼らは外資である。シャッター街の出現をすべて外資のせいとは言わぬ。しかし規制緩和によるものであることは確かだ。この成り行きは新自由主義の浸透の実現である。この作業を徹底して実行し日本市場を一旦焦土とする。その焼け跡に米国型市場を創造する。これがウォール街と多国籍企業に支えられたオバマ政権の真の目的である。
農業はその一部に過ぎない。推進論者はTPPを奇貨として農業改革を進めよという。その前に日本の農業市場は、米巨大企業カーギルやADMの支配下に入るであろう。TPPの基本は「例外なき関税の撤廃」である。別の言葉では「非関税障壁」の撤廃だ。

《主権剥奪にまで及ぶTPPを考えられるか》
 その実態は貿易交渉の名のもとに、相手国が営々と歴史的に築いてきたシステムを破壊する行動である。目には見えにくい知的財産、保険・金融、電気・通信、商業関係者の移動、電子商取引、投資、労働などが主なターゲットである。「ヒト・モノ・カネ」の総体をもって日本市場に自由に参入しようというものだ。かくして、その影響は国民生活の全般、庶民の営みの隅々にまで及ぶであろう。関税自主権、治外法権という国民国家固有の権利までが侵害されるであろう。TPPの理念はそういうものである。FTAでは進出企業に不都合な国家規制には訴訟で賠償させたり規制を撤廃したり権利がある。形を変えた治外法権である。現にメキシコやカナダではその事例があるという。

《日本にメリットはないのか》
 日本側にはメリットがないのか。
製品輸出を主業とするパナソニックやトヨタには関税引き下げのメリットは殆どない。輸出市場の現実は、高い日本円と安い韓国ウォンによって、1年で価格が倍も開く世界である。当然ながら海外生産比率の高い製造業たとえば「ホンダ」の米国生産は80%には関税引き下げの効果はない。
アジアの市場を呼び込む効果はないのか。
TPPに日本が加入すれば加盟10ヵ国中、日米で90%になる。この協定の実質は日米間の政治・文化・経済関係なのである。しかも日本以外の加盟国は産業構造で日本と共通する国は一つもない。中国、韓国、インドのいない協約でどうして「アジアを呼び込める」のか。
日本だけが世界の趨勢に置いていかれるか。
そんなことはない。逆に日本の加盟は、米国企業から見れば「飛んで火に入る夏の虫」であり、来年再選を迎えるオバマにとって大きな援軍になるのである。
ダメなら脱退したらいいのではないか。
交渉のテーブルについて言い分を主張しダメなら脱退したらいいのではないか。
そんなことは不可能である。現に国内にこれだけの反対論があるのに野田政権はあと数日で参加を発表しようとしている。そのことが何よりの証左だ。米国の圧力に屈しているのでいる。

《ショック・ドクトリンから脱出できぬ日本》
 最近、カナダのジャーナリストであるナオミ・クラインの著作『ショック・ドクトリン』(岩波書店)が話題である。新自由主義者は、自然災害や戦争といった緊急で巨大な事件のなかで被害者・当事者の恐怖心や呆然自失を利用して「洗脳」を図り自己の政策を急速に浸透させるのだという。同書はチリのクーデタやイラク戦争などを実例にしてその実態分析を行っている。私は、原爆投下、昭和天皇のマッカーサー訪問写真、東京裁判における日本軍の残虐行為暴露も「ショック・ドクトリン」の先駆的な応用だったのかと考えるようになった。日本人は、1945年の敗戦から65年間「敗北を抱きしめ」続けている。その日本人に少なくとも「どじょう」を愛する野田佳彦に「主張」や「脱退」を求めるのはリアリズムの言語ではない。評論家内橋克人は「東日本大震災」の復興においても日米資本が「ショック・ドクトリン」を応用する危険があることを指摘している。

《自虐的被害妄想という人には》
 私の認識と意見は「被害妄想」であり「自虐的」過ぎるという人があるだろう。
しかし、泥縄式ではあるが数週間勉強して出した結論である。この過程で痛感したのは、反対論が具体的で数値に基づくものであるのに対して、推進論は抽象的で数字に基づいていないことである。推進論の愚例を二つ挙げる。

一つは、菅直人首相(当時)が10年10月に言った「平成の開国」論である。日本の農産物平均関税率(11.7%)はEU(19.5%)より低く、まして米韓交渉の成功としてメディアが誉めている韓国(62.2%)と比べて圧倒的に低い。米国ですら5.5%かけている。日本は既に開国しているのである。
「明治の開国」は関税自主権喪失、治外法権という不平等条約を締結したのである。我々はその不平等条約の撤廃への努力をこそ学ぶべきなのである。
TPPへの参加は新たな不平等条約の危険を大きく孕んでいるのだ。韓国のFTA交渉結果は今、国内世論を二分する大論争を呼び、学生と若者による反対のデモが起こっている。さらに過日のソウル市長選は李明博政権によるFTA交渉結果への大衆の不満爆発と報道されている。

二つは、民主党政調会長前原誠司の発言である。「つんのめり」が好きなこの政治家は、「(GDPに占める農業の)1.5%のために残りの98.5%が犠牲になっていいのか」といった。TPPの全体構造を意図的に隠蔽する俗論である。実際は上に述べたように全産業が米国の利益の犠牲になる恐れがあるのだ。

《「TPPを考える国民会議」に説得された私》
 私の反対論が100%正しいという確信はない。それは主に「TPPを考える国民会議」の言説に依拠しているのである。宇沢弘文、鈴木宣弘、中野剛志、東谷暁、孫崎享らの反対論は、私には圧倒的な説得力があった。私の表現などはおとなしいものである。「会議」ではもっと過激な言説が横行している。中野説は自由貿易論への懐疑にまで及んでいる。この点で私は下村治の言説を想起したい。それに比べて推進論は具体性に欠け無内容な一般論に終始している。読者には「TPPを考える国民会議」のサイトによって彼らの基本的な概念と言説をヨリ深く知ることをお勧めする。

「国を売る危険のあるTPP交渉に入るべきではない」。これが私の結論である。

(転載、以上)

 



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