2009年09月02日
「政権交代」は「二大保守党独裁」の誕生
私がお世話になっている半澤さんがリベラル21に投稿なさった記事を転載させてもらいます。
半澤さんの見方は「シニカル」どころか、アメリカの日本政治研究の教授と同じ見方です。
テレビの「選挙報道」に芸能人やお笑いの方々が登場する国の国民は何が起こっているか、何が起こるか、重要なことは
知らせれませんが。
もちろん、日本でも多くの方がそう見ています。小沢氏が「新たな保守党」を来年あたりにつくる
のではないかと見ている専門家も少なくありません。
以下に転載します。
2009.9.1 「政権交代」は「二大保守党独裁」の誕生
―あえてシニカルな見方を提示する―
半澤健市 (元金融機関勤務)
第45回総選挙は民主党の圧勝に終わった。
数週間のうちに「政権交代」が実現する。これは日本戦後の画期だろうか。
私はそうは思わない。民主党の308議席獲得は大きな数字だ。だが86年7月第二次中曽根内閣下の衆参ダブル選挙で自民党は衆院に304議席を得た。決して驚異的ではない。むしろ今回総選挙は、「国のかたち」に関する基本政策が論点にならなかったのが特徴である。対立は、「政権交代」のスローガンと対する口汚い反論の応酬であった。「官僚政治」の打破と子育て支援の金額比較がわずかに具体的な論点であった。
三つの基本問題
基本政策とは何か。思いつくままに私は次の三点を挙げる。
(1)平和憲法に照らしての「外交」政策である。
平和憲法の基本理念の一つは、2回の世界大戦に学んだ人類の叡智だと思う。
小泉内閣は国連決議なき米国のイラク侵略を支持した。米国が誤りを認めたのに日本政府は認めていない。新国会は小泉純一郎を委員会に呼んでその決定経緯と彼の真意を問うべきではないか。リアリズムの名の下に我々は現状追認を許し日米密約を隠蔽してきた。そんな国が独立国であろうか。
(2)内政・外交を通して「新自由主義」か「社会民主主義」かが最大の基本問題である。現代日本―少なくとも過去30年間―の問題はここに発しここに帰結する。社民主義はアナクロニズムの政策であろうか。そんなことはない。先進国の多くは「社会民主主義」を採用している国家である。日米はむしろ例外なのである。オバマですらニューディールという言語を使っている。最近の「行き過ぎた構造改革の是正」などいう言語に誤魔化されてはならない。
(3)経済の現実認識である。
ワーキングプーア、過労死、サービス残業、年3.5万人の自殺者。エンゲルスは19世紀に「イギリスにおける労働者階級の状況」を書いた。エンゲルスの描いた世界は、GDPが5兆ドルの経済大国の21世紀の現実ではないか。この現実にどう立ち向かうのか。自民党は戦後政治を失政とは考えていないから、エンゲルス的世界を前提としては出発しない。それを引き継ぐ民主党も同様である。
二大保守党独裁システムの誕生
このような基本テーマは選挙の争点にならなかった。
そういう論議がない選挙戦が「画期的」であったと私は思わない。したがってその結果も「歴史的」でも「画期的」でもない。株価の反応は早くも「政権交代」が画期的でないと予見している。米国も財界も新政権を少しも恐れていない。
「政権交代」は「二大保守党独裁システム」の誕生というのが私の見立てである。これはシニカル(冷笑的)に見えるかも知れない。しかし新聞の大活字とテレビの反復映像は人々に幻想を与えている。一人ぐらいはこういう見方をする人間があってもいいだろう。