2009年10月10日
「最初から不利だった東京五輪招致」大前研一
日本のメディアからは国内のことも、海外のことも分からない、とよく聞きます。それにしても、オリンピックに関する報道もひどかったです。ニュース番組の司会者が応援団になっていましたから。以下、大前研一氏のニュースの視点からです。最初から不利だったのになぜ五輪招致に動いたかという点に関しては述べられていませんが。
大前研一ニュースの視点
「最初から不利だった東京五輪招致~一過性の熱狂より長期的な都市計画を!」
東京にもシカゴにも、強い理由・メッセージが欠けていた
2日、国際オリンピック委員会は、2016年夏季五輪の開催地にリオデジャネイロを選出しました。これによりリオデジャネイロは3度目の挑戦で悲願を叶えたことになります。
一方、落選となった東京では石原慎太郎知事の求心力が低下。招致活動だけで100億円もの税金を投入し、オリンピックの会場予定地の新たな用途も見通せない状況です。
石原知事がオリンピック招致を実現できなかったことについて、「東京のプレゼンテーションはほかの国に比べて圧倒的によかったと思うが、目に見えない力学が働いていた」と述べたとのことですが、小説家の石原知事らしい表現です。小説家としてはどのようなシナリオを描くのも自由です。しかし、知事としてこの発言には疑問を感じます。
私も当日のプレゼンテーションを見ていましたが、客観的にかつ公平に見て、東京のプレゼンテーションが他に比べて良かったとは言えません。
決して流暢とはいえない英語で難しい高校の英作文のような文章を読み上げた鳩山首相、そして自己流のブロークンな英語を披露した石原都知事。いずれも褒められたレベルではなかったと私は思います。
それに対して、ルラ・ブラジル大統領の演説は素晴らしいものでした。ポルトガル語で話した内容を英語に通訳するという形式でしたが、ルラ大統領が話す言葉から発せられる「生きたリズム」のようなものが伝わってきました。一言で言えば、自然な形だったと私は感じました。
先日の国連サミットの際、鳩山首相の演説は平坦過ぎると私は指摘していたのですが、今回の演説はその時と比べてもさらに抑揚がなくリズムが悪かったと思います。
またその鳩山首相と同じくらい低いパフォーマンスだったのが、あの演説の天才であるオバマ米大統領です。
私が見るに、明らかに気合いが入っていませんでした。あのオバマ大統領でも気持ちが入っていないと、こんな演説になるのかと驚きました。
また演説の論旨展開を見ても、ブラジルが最も説得力があったと言えます。アフリカとともに南米大陸では、未だ五輪が開催されていません。
五輪の5つの輪は5大陸を象徴するものですが、そうした五輪の基本理念から考えても、五輪未開催の大陸で初の開催というのはそれだけで「大きな理由」になります。
一方、日本や米国の場合には「なぜ今東京なのか?」「なぜ今シカゴなのか?」という点がしっかりと説明されていなかったのが致命的です。
特に東京は1964年に開催されているわけですから、「なぜ2度目を開催するのか?」ということにも明確な理由が必要です。「50年ぶりだから」では理由にはならないのです。
日本勢は環境問題への取り組みをアピールポイントにしていましたが、これも「なぜ五輪と環境問題を結びつけることが重要なのか」という説明が不足していたと思います。鳩山首相が温室ガス25%減を公表したからといって、そんなことはオリンピック委員会には関係がないからです。
結局、「南米大陸で初の五輪開催」というメッセージが、オリンピック委員会や世界の人々に対して最も響く「意味」を持っていたということでしょう。
正しい情勢認識をすれば、最初から東京はなかった
結果論としてリオデジャネイロには勝てなかったけれど東京も頑張った、というのが日本のマスコミの論調ですが、私はこの意見に賛同できません。
100億円以上の税金を無駄にしたという批判以上に、築地・勝どき・晴海といった東京都にとって重要な土地をオリンピック用地という理由で今まで有効活用できない状態にしておいたことが罪深いことだと思うからです。
これほど、同地域の大きな発展の可能性を阻害するようなことをしておいて、その責任を一切取らないというのは問題でしょう。
私は以前からリオデジャネイロが圧倒的に有利だと述べてきましたが、これは過去の歴史を振り返ってみても、すぐに理解できます。例えば、ロンドン招致の際のブレア英首相、ソチ招致の際のプーチン露大統領(当時)のように、オリンピック招致にあたって絶対的な人気を誇る政治家の名演説は大きな影響力を発揮します。
今、ブラジルのルラ大統領と言えば、あのオバマ大統領が羨ましいと言うほどの絶大な人気を誇る政治家です。
ブレア首相、プーチン大統領(当時)、ルラ大統領たちが熱く世界に語りかける、そのメッセージの強さは圧倒的なものがあります。彼らに太刀打ちできる日本の政治家はいるでしょうか?
もしオバマ大統領が本気になって取り組んでいたならば、「なぜシカゴなのか?」ということを情熱的に語っていたならば、ルラ大統領に匹敵するだけの強いメッセージを残せた可能性もあると思います。しかし、日本の政治家では全く歯が立ちません。
こうした「情勢」をしっかりと見極めていれば、日本が勝てるという安易な考えを持ち出すことはなかったでしょう。高橋尚子氏などのスポーツ選手も日本の応援団に加わって「絶対に勝ちます」というような発言をしていました。
アスリートとして彼らのことを尊重したいとは思いますが、しかしそういうアスリートとして必要な心構えとは別に「情勢」を見極めることが必要だったのです。競争相手がどのような相手なのか?という基本的なことさえ、日本のチームは理解していなかったと私は思います。
また、日本のマスコミの報道のあり方にも大きな問題があったと感じています。結果としてオリンピック招致に失敗したのに、それを強く批判もせず「頑張った、あと一歩だった」という論調がほとんどです。
私に言わせれば、そもそも立候補すること事態、今の東京都の立場からすれば優先順位が違います。オリンピックのようなイベントで一時的に盛り上げるのではなく、日々「人・企業・情報」が集まってくるような、毎日を活性化するような街づくりを考えることが、今の東京に必要なことだからです。
このような状況で、なぜ東京にとって重要な土地を無駄にしたという事実をマスコミが糾弾しないのか?私は非常に残念です。おそらく殆どのマスコミは電通への配慮から、表立ってオリンピック招致への反対意見を述べにくいのだと思います。電波に大きな影響力を持つ電通とあらゆる利権構造が背景に見え隠れしているからです。
現代は、間違った圧力のかかった情報にまみれています。今回の件について言えば、最初から東京には勝ち目は殆どなく、「期待できる」などと言うべきではなかったと思います。
日々私たちが接する情報、特にテレビから発信される情報には注意するべきです。それらを鵜呑みにすることなく、正しい情報と状況認識ができるように心がけてもらいたいと思います。(以上)
2009年10月10日
NHKディレクターの大きな勘違い 「からまんブログ」から
もう少し早くこのブログでも取り上げようとしていたのですが、NHKの取材を受けた漫画家の唐沢なをき氏のブログで次のようなことが書かれていました。唐沢氏はディレクターの取材に嫌気をさし、取材と放送を中止してもらったということです、もうご存知の方も多いと思いますが。取材相手の忙しいスケジュールにもかかわらず、取材に協力してもらっているのだから、このような態度はいけません。この問題からも、昨日のNHKの記者の問題からも感じられるのは、驕りだと思います。取材側なんて、ちっともえらくないのです。しかし、何か大きな勘違いをしているようです。
(以下抜粋)
『マンガノゲンバ』の取材、放送を中止してもらった理由ですが、この番組の取材、ほんっっっと~~~~に不愉快だったからです。びっくりしました。
なんというか、インタビューが誘導尋問的なんですよ。ディレクターさんがなをさんに質問し、それになをさんが作画しながら答えるというところを撮影してたんですが、なんか、このディレクターさん、勝手に頭の中で「ストーリー」を作っちゃってるんですよね。唐沢なをき像というか。
(中略)
この撮影する前に事前取材があったんですが、そのときにこちらが言ったことを、勝手に解釈して話を考えて、番組の流れを作ってるんですね。ちょっとなをさんの漫画を追いかけて読んでくれている方ならば、「なんだこれ?」と思う「ストーリー」だと思うんですが。
で、インタビューでディレクターさんの質問に対し、なをさんが彼の考えた「ストーリー」に反する答えを言うとします。すると、彼はがっかりした顔で苦笑しつつ、「いや、そういう答えじゃなくて~」と、別の答えを要求するんです。自分の「ストーリー」に即した答えを言うまで許してくれないんですよ。自分のインタビューに対する答えを、質問する前から想定してるんです。
で、結局、なをさんがストーリーに合わない答えしか言わないと、「あー、それじゃあですね!」と、なんかあからさまにイヤそーに別の質問に切り替えたりして。
このイヤそうな態度を見てると、「この漫画家、使えない答えしか言わないなあ」って思われてるような気がしてきて、早くこの場から逃れたい、解放されたいという気持ちになって来るんですよ。「ちゃんとした、良い答えがいえない俺……」って、罪悪感を感じてくるんですよ。で、つい、相手が望みそうなことを、本意でないのに言ってしまうという。……誘導尋問的じゃない?
(抜粋はここまで)
当日の全文はこちらです。
2009年10月10日
NHK記者の大きな勘違い Winny裁判で
昨日から話題になっている壇俊光弁護士のブログのリンク。
それにしてもひどい手紙だ。ひどすぎる。上記のブログを読んでもらえれば、何度も言っている通り、大手メディアが普通のレベルの低さではないということが分かるだろう。だから、政権交代だけでは社会はよくならない。しかも、この記者は「司法の分野」担当だそうだ。ほんとうにおそろしいことだ。今後もこのような問題が明るみになってくるだろう。何かほんとうに大きな勘違いをしている記者が多すぎる。川﨑氏が話していたように、教育できる人もほとんどいないのかもしれない。