ミサイル迎撃ありえない、専門家 

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2009年04月01日 06:30

麻生政権は北朝鮮で支持率上昇をねらっているのだろうか。

東奥日報 
ミサイル迎撃ありえないと専門家 
イージス艦と地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を緊急配置した防衛省の姿勢は「矛盾をはらんだ政治ショー」

 北朝鮮が「人工衛星」として発射準備を進める長距離弾道ミサイル問題が緊迫している。三十日までに、自衛隊に初の破壊措置命令が出されたほか、米軍三沢基地の弾道ミサイル情報処理システム「JTAGS」(統合戦術地上ステーション)と、車力通信所(つがる市)の移動式早期警戒システム「Xバンドレーダー」が監視態勢を強化。「高い確率で迎撃できる」(キーティグ太平洋軍司令官)と日米関係者が対応に自信を見せる中、ミサイル迎撃という緊急事態は起こり得るのか。国内外の専門家の間では「『迎撃』は日米の政治的なポーズ。実際はそういうことにはならないだろう」との見方が強い。

 「迎撃は百二十パーセントありえない」と断言するのは、北朝鮮の軍事情報の分析で知られる国際ジャーナリストの恵谷(えや)治さんだ。恵谷さんは「日米の国防当局が『迎撃』を公言するのは政治的な意味合いにすぎず、ミサイル防衛の優越性を強調するためにほかならない」と続ける。

 迎撃しない理由として挙げるのは、今回の発射が北朝鮮のミサイル技術の最新情報を、日米が収集する絶好の機会である点。

 「発射するものがミサイルであろうと、衛星運搬用のロケットであろうと、性能を探るチャンスであることには違いない。打ち上げられたミサイルから送られるさまざまなデータを傍受することが、軍事的に最優先される以上、日米は宝の山を破壊したりしない」

 破壊措置命令に基づいて、最新のイージス艦と地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を緊急配置した防衛省の姿勢を「矛盾をはらんだ政治ショー」と説明するのは、軍事評論家の前田哲男さん。

 「第一に技術的問題として現在のシステムでは長距離弾道ミサイルに対応できない。それなのに多額の税金を注いでいる以上、『迎撃できる』と言わざるを得ないところに防衛省の苦悩がある。半面、これまでやりたくてもできなかったPAC3などの緊急展開を訓練代わりにできる。複雑な気持ちなのでは」

 北朝鮮が発射を計画しているのはテポドン2の改良型。射程は最大八千キロとみられ、高度は千キロをはるかに超える。高度百-二百キロ程度しか届かないイージス艦のミサイル(SM3)では、そもそも迎撃が不可能なのだ。恵谷さんと前田さんが「技術的に迎撃不可能」と口をそろえる理由がそこにある。

 米ワシントンDC在住のジャーナリストで、ジョージタウン大大学院フェローの平田久典さん(安全保障論)は「米国では冷静な受け止め方が目立つ」と、迎撃態勢構築にひた走る“現場”との温度差を指摘する。

 「米国民の多くはミサイル問題の存在すら知らない」と平田さん。「米政府も『発射は挑発的行為』と一応、北朝鮮をけん制。発射した場合にはそれなりの抗議はするものの、大ごとにする気はないのではないか」と話す。

 背景には北朝鮮が今回の発射を「衛星打ち上げ」と公式に説明。国際海事機関を通して事前通報するなど「国際的な手続きを踏んでいるため、抗議しづらい状況がある」(前田さん)とみられる。加えて、「米国はイラク、アフガニスタン問題で手いっぱいで、北朝鮮までとても手が回らない」(平田さん)状況もあるという。
2009/3/31

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